2012年5月27日日曜日

アイデア創出の処方箋「バイアス崩し」 -Ziba濱口秀司氏プレゼン@TEDxPortland-


「アイデアを生み出すための始めの一歩は何か?」
「(アイデアを生み出すためには)アイデアにフォーカスしてはいけない」

んんっ?っていう感じの人も多いはず。今回紹介するTED動画のひとコマ。動画は前者の問題提起で始まり、後者の注意で終わります。

スピーカーはこれらのエントリ(その①その②)でも取り上げさせてもらった、デザインコンサルティング会社Zibaの戦略担当ディレクター濱口秀司氏。TEDxPortlandでのプレゼンテーション。先日濱口氏が講演された東大i.schoolのイベントに参加してこのお話しのもう少し長く中身深い版を聞いたので、おさらいに持ってこいの内容。もちろん、この動画だけ見ても幾つもアイデア創出のヒントが転がっている濱口エッセンス濃縮版といった感じです。



■「0」(ド新規)からではなく「1」(バイアス)から始める
動画を見ていただければわかると思いますが、冒頭の「アイデアを生み出すための始めの一歩は何か?」に対する答えは、「バイアスを見つけそれを崩すこと」だと言われています。「0」から「1」を生む作業(ド新規のアイデア)にフォーカスするのではなく、「1」(バイアス)を見つけ崩すことにフォーカスせよという教えです。「1」というのは、人の認知バイアスであり、方法論としてのアイデア創出を考えるのであればこのバイアスの発見、崩しにフォーカスすべきと。

濱口氏はいくつかのチームに議論をさせた時に注目するのは、そこから出てくるアイデアではなくそれぞれのチームの思考パターン(バイアス)であると言われています。始めて聞いた時に、この目の付けどころは新鮮でハッとしたことを覚えています。バイアスを見つけるには、人の思考パターンの偏り、慣習、業界の常識といったところをいかに見つけ出すかが鍵になりそうです。

実はこの濱口氏はUSBメモリを開発した方(あとはサイボウズのようなイントラネットとか)なのですが、その誕生のきっかけもこのバイアス崩しであるということです。それを表現するのがこのチャート。

※「TEDxPortland - Hideshi Hamaguchi」より引用(5:09頃)

データのストレージ・移動について、データ量を横軸、データ移動の経験(タンジブル、インタンジブル ※目に見えるか、見えないか)を縦軸とした時に、業界が白色の矢印で進む(データ量も膨大になり、ネットワークを通じてデータがインタンジブルにやり取りされる)であろうというコンセンサスを持っていたのに対して、それをバイアスと捉え、タンジブル×データ量大の方向(赤色の矢印)にアイデアを持っていったというエピソードです。これがUSBメモリです。

■バイアスに着目する際に気をつけること(私見)
これは動画で言及されていることではないので私見ですが、注意しなければいけないのは、このバイアス崩しは、空白スペース(ニッチ)を見つける、単純に逆張りする、という類のものではないということです。要は何かの2軸をとって、今世の中に製品やサービスがないある象限で何かをやればそれがバイアス崩しだとする落とし穴です。

濱口氏がよくおっしゃるのが「Shiftを生むもの」です。つまり、バイアス崩しとは、現状にバイアスがあったとしてその横っちょで空白スペースをつまみ食いするという発想ではなく、新しいパラダイムにシフトするイノベーションです。ちなみに、濱口氏は「Shiftを生むもの」の基準として、そのアイデアがNewなのか、Doableなのか、Controversialなのか、という3点でも見てみるのが良いとおっしゃっています。最後のControversial(物議を醸す)というのがユニークですね。

■あとは自転車に乗る時のようにやってみること
上記は机上の理論ではなく、アイデアを生み出すための実践的なツールであると思います。ツールは使わないと意味がありません。

以前の講演で濱口さんがおっしゃっていたことに、自転車に乗れるようになる時のメタファーがあります。子供のころ、自転車に乗るために何か教科書を読んで頭で理解して自転車にまたがったら乗れた、という経験をした人はまずいないのではないかと思います。行きたい方向見る、スピードを出して漕ぎ出す、何回かこける。これで乗れるようになるわけです。Just do itだと。

動画では、じゃあどうすればこのバイアスを見つけられるかについても言及されています。すぐにでも実践できるエッセンスが多いですよ。是非動画をご覧ください。

1st step of idea creation is...
First, Break the Bias.
Do not focus on idea.

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