「イメージ」という言葉は非常に便利な言葉です。オフィスでもよく「そうそう、そんなイメージで進めてください」とか「イメージで言うとXXXな感じですかね」といったやり取りをよく耳にするのではないでしょうか。
抽象的な概念レベルの議論やゴールや目的といった前提条件をしっかりと共有できているチームにおける議論においては有用な言葉ではありますが、議論している事柄を具体的な言葉や数字で表現できない時に苦し紛れに濫用される傾向も否定できません。
この、「イメージ」の危うさを感じたのが、『選択』2011年12月号の『「低栄養化」している日本人』という記事です。以前のエントリ(『数字には意図がある -「基準値」によって変わる「患者数」-』)でも少し引用した柴田博医学博士の連載です。
ここで紹介されていたのが、日本人のエネルギー摂取量(キロカロリーのやつです)の実態です。
皆さんは、最近の日本人のエネルギー摂取量は昔に比べてどのように変化しているとお考えになられるでしょうか。(タイトルに書いてしまっているのですが。。)
「イメージ」で言うと、「飽食の時代」「メタボ」「欧米化」「食生活の乱れ」といったように、大きくエネルギー摂取量が増えているという印象を抱かれるのではないでしょうか。
事実はその逆で、記事によると、日本人の低栄養化が進んでおり、過去に比べても摂取エネルギーは減り続けている、ということです。驚きじゃないですか?
日本社会は高齢化により高齢者が増えている、摂取エネルギーが減少するのは当然、という反論が想定されるところですが、それに対しても下記のように年代別に推移が数字で示されていてます。(結論的には、ほぼ年代に関係なく減少しています)
※出所は厚生労働省の国民健康栄養調査
※「小学校・中学校世代のエネルギー摂取量が減っていないのは給食に依拠しているから」等の年代別の数字に意味合いも記述があって面白いのですが、話がそれるので割愛
この連載の過去の記事には、日本人の総カロリー摂取量は、終戦直後の1946年より、今の方が低くなっており、現代の方が低栄養。1946年の1日の平均摂取カロリーが1903キロカロリーであったのに対して、2008年は1867キロカロリー、とあります。
これはまさに「イメージ」と実態がかけ離れた、いわば空中戦が展開されている典型例ですね。実態や事実を無視し、日本人のエネルギー摂取量について単なるイメージだけで語られ、逆行する政策や妙な健康法ができあがるということを想像すると、怖くなります。
上記はあくまでも一つの例ではありますが、「イメージ」で語る時に必ずセットで見ておかなければいけないのが、ファクトであり数字なのだと思います。「イメージ」という言葉、便利な言葉であるだけに気をつけなければいけないですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿