2011年12月23日金曜日

「ネクスト」プラクティス -故C.K.プラハラード教授のコラムより-

ベスト・プラクティス。業界を語る時、何か新しい製品・サービスについて考える時など、必ずこのワードを出す人が周りにもいるのではないでしょうか。コンサルタントが好む言葉の一つです。
最も効果的、効率的な実践の方法。または最優良の事例のこと。
ビジネスや経営においては、世界で最も優れていると考えられる業務プロセス、業務推進の方法、ビジネスノウハウのことをいう。
(『@IT 情報マネジメント』より)

ベスト・プラクティスという考え方は、業界におけるキャッチアップや競争優位を考えるためのベンチマークとしての活用といった、特定の目的においては有用ですが、万能ではないということはビジネス界に共通の認識だろうと思います。
特に業界のリーダーを目指す、何か革新的なことを創造する、といった目的には不向きであるように思います。

また、ビジネスの展開や新陳代謝が非常に早い昨今では、現在のベスト・プラクティスが(極端ですが)明日には陳腐化してしまうというケースもあるように思います。

これに対して、業界でのリーダーとなること、あるいはイノベーションの創造を目的とした時に必要となってくるのが、将来のベスト・プラクティスである「ネクスト」プラクティスです。
私の知る限りで、この考え方のオリジナルは2010年に亡くなった故C.K.プラハラード教授(ミシガン大学ビジネススクール)です。積読(つんどく)にしていた、ハーバード・ビジネス・レビュー2011年11月号をパラパラとめくっていたところ、プラハラード教授のネクスト・プラクティスに関するコラムが掲載されていたので、少し引用します。

ちなみに、英文の記事もこちら(Column: Best Practices Get You Only So Far)にあります。
・企業は、業界ナンバーワン企業のベスト・プラクティスに特に注目し、それを実践しようとする。
(中略)
これで競合他社と肩を並べることはできるかもしれない。しかし、それだけでは市場リーダーになれないだろう。私がこの20年間、CEOたちに説いてきたように、企業が勝ち組となるには、大きなチャンスを見出した上で、将来のベスト・プラクティスになる「ネクスト・プラクティス」を考案することである。

・ネクスト・プラクティスの着想は、ひとえにイノベーションにある。すなわち、将来像を思い描き、到来するであろう大きなチャンスを見極めて、それに投資できる能力を構築することである。

・大半の経営幹部は、画期的なチャンスの発見は難しいと思い込んでいる。なかには実に明白なチャンスも存在するが、ピーター・ドラッカーは、かつて、最高のチャンスは「目に触れても認識されない」と語っている。

・(前略)イノベーションのチャンスととらえるよりは、むしろ問題として扱うことに執着する。

・ネクスト・プラクティスをつくり上げる方法を見つければ、多くのチャンスがある。実際のところ、経営幹部を束縛している要因は、資源不足ではなく、想像力不足なのだ。

これって、企業のビジネス展開においてのみならず、個人のキャリアや投資についてもまったく同じことが言えますね。流行ってきたからやれソーシャルだ、やれグローバルだと右往左往するのではなく、目に触れているけど認識できていない機会をしっかりと見極め、行く先を定めることが重要ですね、と自戒。確かに、ものごとを問題と捉えるのかチャンスと捉えるのかという点で、認識できるものやその見え方は大きく違ってきそうです。

ちなみに、私はこのC.K.プラハラード教授の著作が好きで何回か読んでいますがお勧めです。特に有名なのが下記の2つですね。こう見ると教授の視点は常に過去ではなく未来に向いています。

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略
ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略

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