これからの時期、各業界において2011年の振り返りと2012年の展望が続々と出てくる時期なのかと思いますが、マーケティングやマーケティングリサーチの業界においてもぼちぼちとそのような記事が出てまいりました。今回読んだのは、米国のテクノロジー関連調査会社のForrester Researchから『Research in 2012: new methods, stronger structures and less PowerPoint』というレポート(正確にはそのAbstract)です。
(どうでもいいですが、この手のレポートってなんでこんなに高いんでしょう。満足しなかったらリファンドするとは言え、499ドルって・・・)
Abstractの要約ってのも変な話ではあるのですが、自分の中での整理のためにも、マーケティングリサーチにおける2011年の振り返りと2012年の展望をメモ(かなり意訳)。
2011年の振り返り
・「ソーシャル」なリサーチは盛り上がるもそこまで伸びず
ソーシャルなツールやソーシャルメディアのリサーチ目的での利用への関心が増し、特にMROCs(market research online communities)が特に関心を引いた。ただし、実際にこのような手段を用いてマーケットの声を抽出するという取り組みはそこまで伸びなかった。
・ROI(投資対効果)へのプレッシャーが増加
経済の状況もあいまって、マーケットインサイト(平たく言うと調査)の経営への貢献(成果)をより見える化すべきという圧力が高まっている。2011年の早い段階で調査ものの1/3でエグゼクティブへの説明が求められるような状況だったが、2012年には半分以上でそのような状況になるだろうと。クライアント企業のKPIの改善への寄与、および投資対効果の視点で厳しく貢献度合いが問われる。
・新しい方法論への興味は限定的
ゲーミフィケーション、予測市場、アイトラッキング、モバイルリサーチといった革新的な技術・方法論について、取り組んだ企業は業界問わず限定的だった。幾つかのベンダー企業(供給者)は積極的にその展開を推進しており、ベンダードリブンの展開は続くと予想。
・ビッグデータをどのように扱えばいいのかわからず
企業が利用可能な多岐にわたるデータ(いわゆるビッグデータ)を意味ある活用につなげることがマーケターにとって大きなチャレンジとなっており、ベンダー(供給者)サイドではツールの拡張やM&Aを積極的に展開。一方で、クライアントサイドはまだそこまでの関心を示さず。ただし、その重要性からも、ここ数年で関心は高まる見込み。
2012年の展望(のうち幾つか)
・モバイルリサーチが(ようやく)本格導入
これまで期待されながら、期待以下の導入スピードだったモバイルリサーチの導入がようやくクライアントサイドで進みそう。同時に、適切なモバイルリサーチについての方法論やマルチプラットフォーム/デバイスでのリサーチマネジメントについてのあり方に対する議論が起こる。
・情報サプライチェーンの最適化
マーケティングリサーチの世界で多くのインタビューやプロジェクトが実施され複雑化が進むにつれて、リサーチを担当する者のコア業務はレポートを書くことではなく、情報サプライチェーンの最適化に移行する。それに伴い、多くの組織で情報や調査結果のフローを効率的にマネジし、タイムリーに情報にアクセスできるように模索が進む。その中で、複数のベンダーや情報ソースを跨いだ分析を通じた価値創出が起こり、外部事業者にもベンダーではなくパートナーとしての役割が求められるようになる。
・リサーチアウトプットの変化への要求の高まり
世の中が、静的で一次元のデータではなく、双方向的でより視覚的で刺激的なグラフィックで構成されてきている中で、パワーポイントのチャートは飽きられるだろう。リサーチ以外の部門では、より視覚的でユニークな形式で情報を提示するようになってきており、リサーチについてもその期待は高まる一方。外部リサーチベンダーにも、例えばデザイナーやデザイン会社への依頼を行うような、先駆的な取り組みが求められる。
2012年の展望について、これらを、タイムライン、品質、洞察の深さ、革新性をバランスして進めること、それだけではなく自前主義で進めず、コスト低減を行いながら進めることが求められていると書かれています。うーん、難しい。
個人的には「情報サプライチェーンの最適化」というところが本質的なポイントではないかと思います。手段は色々、データは色々、でもそれをいかに統合してうまく経営や事業展開に活用するか。パワポを数十枚も納めながら数枚(場合によってはゼロ枚)しか採用されない外部リサーチベンダー、いちいち手直しのリワークを求められるクライアント側担当者、どちらも不幸じゃないですか。「オンデマンド」と言われて久しいですが、これが本当の意味で実現されていくことが期待されます。
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