調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940) 野村 進 (著)
まだ途中なので、別に書評でもまとめでもないのですが、仕事の参考になる部分があったので少し抜粋。それは「インタビュー」にまつわる方法論。
著者は著名なノンフィクションライターらしいので(本書を読むまで著者を知らなかった。。)、取材という観点からの記述なのですが、これが結構、マーケティングの基本である(生活者等への)インタビューにも通じるのです。
以下に、気になったところを抜粋。
■基本的に取材対象に対して聞く質問
著者は、成人に対するインタビューでは基本的に下記の20項目をベースに質問を構成するそうです。(もちろん目的に応じて変えるのだと思います)
- 家族構成、家族とりわけ両親や兄弟姉妹との関わり
- 生い立ち、どんな子供だったか、生活環境
- 子供のころの思い出、忘れられない出来事
- 子供時代と青年時代の夢
- 影響を受けた人物や本など
- 青年期以降、現在に至る個人史
- 友人関係、ニックネーム
- 現在の仕事に就くまでの経緯とその後の変遷
- 仕事の内容と楽しさ、むずかしさ、やりがい
- 職場での人間関係
- これまでで最も辛かったこと、涙を流したこと
- 長所と短所
- 尊敬する人物、最も好きな(タイプの)人物と最も嫌いな(タイプの)人物
- 典型的な一日のスケジュール
- 趣味と娯楽
- 好物、嗜好品、もしいたらペットについて
- 金銭観
- 異性との付き合い、セックス観
- 何を信じているか
- あなたを突き動かしている原動力は何か
■人物を見る
著者は相手の第一印象を大事にするそうで、あくまでもさりげなく相手を「すべてを見尽くそうとする」らしいです。そのポイントが下記。
- 顔つき、体つき
- 服装、ファッション・・・見落としがちなのが、相手の靴
- 表情・・・特に目と口の動き
- しぐさ、癖・・・たとえば、腕を組む、こちらの目を正視しない、手を叩いて笑う、口を手で覆いながらしゃべる、貧乏ゆすり
- 視覚以外の感覚で感じたこと・・・たとえば、声の調子、握手をしたときの手の温かさ・冷たさ・しめりけの有無、握力の強弱、体臭(香水のにおいを含む)
あくまでもさりげなく、あくまでもゆとりを持って、とのこと。
■情景を見る
取材相手のいる場所やその人物を取り巻く環境にも目を行き届かせることが必要だと著者は言います。文中では、その例を挙げています。
私は、総理大臣になる数ヶ月前の細川護熙にインタビューにしているのだが、事務所のデスクの脇にケネディ大統領の写真が飾ってあり、実に意外な思いにとらわれた。当時、細川には首相の目はないとされていたのだが、あのケネディの写真を目の当たりにした瞬間、清新なイメージで売り出し中だった細川の野心の臭いを嗅ぎ取った気がしたものである。
また、阪神大震災の直後に現地に入った著者の取材ノートには、下記のような語句が断片的に記されているという。
焼け跡 空襲後のよう 騒然たる雰囲気 もうもうたる粉塵 マスクをし、口をおさえ黙々と歩く人々 顔をあげている人はいない 糞尿の臭いが風に乗ってくる 荒涼とした海辺の情景を想起 赤茶けたブリキ屋根が海草の代わり 黒こげの押しつぶされた車 そこに電柱から伸びた電線が無数にからみついている まるで執念深い女の髪の毛 ベニヤ板の立て看に『骨さがしのため立入禁止』の文字 ボールペンの震える字・・・
当然これ以外にも目的に応じた質問を用意して聞くのですが、共通的にこれらのことは重要視しているようです。著者はそのように書いていませんが、これってまさに観察であり、プロファイリングですね。これがあることによって、目的に応じて用意する質問への回答に文脈が生まれるのだと思います。
このように、インタビューとは「観察する」こと、と言い換えることができると思います。マーケティングにおいても、「お客様に声を聞くことが重要」とインタビューするのはいいですが、単純に良い/悪いを聞くにしても、何を背景にそのように言っているのかを掴めないと回答に対する意味合いが見出せません。この時「なぜ」と直接的に聞くことも一つの手段ですが、上記のような人物や情景を「観察する」ことで見えてくることも多いはず。
ちなみにこれ、日常のビジネスミーティングでも使える話かと。「空気を読む」「キャラを読む」ってところでしょうかね。
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